「治らないの!? 治る方法、あるんだよね!?」


 私は悟くんに対して、責めるように言ってしまった。

 どうしても受け止めたくなかった。

 樹くんがあと何年もしないうちに、死んでしまうかもしれないなんて。

 悟くんは沈痛な面持ちのまま、口を開く。


「手術をすれば治るんだって」

「そうなの? じゃあ早く手術を……」

「でもね、その手術にはリスクがあって」

「リスク?」

「病気を取り除いたとしても、今までの記憶を全部失ってしまう可能性があるんだって。家族のこととか、友達のこととか、栞ちゃんのことも……」

「今までの記憶を……!?」


 手術をしなければ二十歳までに死んでしまう。

 だけどその手術をしたら、樹くんが今までのことをすべて忘れてしまうかもしれない。

 大切な家族との思い出も、いとこの悟くんのことも。

 ……私と出会ってから過ごした今までの時間のことも。

 なんでそんな辛い運命を、樹くんが背負わされているの……?