悟くんが諦めたようにため息をつきながら、そう言った。


「……やっぱり悟くんは、私の知らない樹くんの事情を知ってるんだね」

 
 悟くんはこくりと頷く。


「親同士も仲いいからね。俺と樹も、腹割って話せる中だし」

「同い年のいとこだもんね。……それで、樹くんはやっぱり病気なんだよね?」

「――うん。俺も詳しく病名は知らないんだけどさ」


 悟くんは静かに、樹くんの体の事情について話し始めた。

 樹くんは脳の病気を患っていた。

 中学生の時にそれが発覚して、その専門医があるこの町に引っ越してきたらしい。

 今すぐ命を落とすというわけではないそうだけれど、とても厄介な病気だそうで、このままだと二十歳まで生きるのは難しいだろう……と担当医には告げられているんだとのこと。


「そんな! 二十歳までって……!」


 もう三年くらいしかないじゃない。

 そんなこと……。

 明るいけれど、どこか気まぐれな魅力があって、かっこよくて、いつも周りには人が集まっている、人気者の樹くん。

 彼にそんな重苦しい事情があるなんて、私はいまだに受け入れがたかった。