私みたいな暗い女の子、きっと好きになってくれないよ。

 言おうとしたけれど、思わず喉の奥に引っ込める。

 本心だけど、ちょっと卑屈すぎる。

 琴子が気を悪くする気がした。


「それに、何?」

「あ……。だってこの人の重大な決断って、恋愛事っぽいじゃん。すでに好きな人がいるんだよきっと」


 誤魔化すために思いついたことを言う私。

 だけど実際にそうな気がした。

 つまり私はすでにお呼びじゃない。

 ――でも。

 お友達くらいにはなれないかなと思う。

 実際に会って本の話が出来たら……と何度も考えた。

 だけど人見知りのせいでうまく話せないかな、どうせ。

 琴子は私の言い分に納得したらしく、渋い顔をしてため息をついた。


「あーそっか。そうだよねー。あーあ、イケてる男子とはそう簡単に付き合えないかあ」

「あはは……」
 

 琴子の言葉に乾いた笑い声を上げる。

 すると、ふとノートの彼の書き込みが目に入った。

 ん?

 書かれた文字の下に、消しゴムで消された字の痕跡が薄っすらと見えた。