「これはね、図書館に置いてあるノートなんだ。本の感想を書いたり、図書委員や司書の先生におすすめの本を聞いたりできる、本に関してならなんでも書いていいノートなの」

「…………」

「でもあんまり書いてくれる人はいなくって。そんなノートなんだけど、私ずっとある人とやり取りをしててね。それでその人にいろいろ相談……」

「知ってる」


 ノートについて説明をしていた私の言葉を、樹くんが遮るように言った。

 低い声で。

 その言い方が彼らしくもなく、意味深な風に聞こえて、私は困惑した。


「え?」

「知ってるよ。知ってるも何も……俺だから。そのノートに書きこんでたの、俺だから」

「え……?」


 樹くんの言っている意味が、しばらくの間私にはわからなかった。

 俺だから……?

 それって……。

 ずっと、一年以上も、このノートに書きこんでいたのは樹くんだったっていうこと?

 顔も名前も知らないと思っていた、いつも親身に相談に乗ってくれていたノートの彼が、樹くんだったっていうこと?

 え、それじゃあ樹くんって……。


「樹くん……病気なの?」