彼はただの友達だと思っているだろう私が、いきなりこんなことを言ってきたんだもん。

 でも私は、ちゃんと伝えたいんだ。


「昔の出来事をいつまでも引きずって、教室の隅っこにいた私に声をかけてくれて。手を繋いでくれて。ひとりでは行けない世界に連れて行ってくれた樹くんのことが。本の中だけじゃない、現実の世界で楽しい思いをたくさん感じさせてくれた優しい樹くんのことが。――私は好きになったんです。大好きです」


 驚くほどすらすらと、樹くんへの感謝と恋心を私は言葉にすることができた。

 やっぱりそれって、今抱えている図書館ノートのお守り効果なんだと思う。

 もし樹くんにふられてしまっても、ノートの彼にはちゃんとお礼を言おうと思う。

 あなたのおかげで、勇気が出ましたって。


「……そのノート」


 しばらくの間、驚いて固まっていた様子の樹くんだったけれど、私の告白の後にまず彼が言ったのは、私が抱えているノートのことだった。

 意外な返答で戸惑う私。

 でもこれを抱えての愛の告白だったのだから、やっぱり彼も一体なんなのか不思議でしょうがなかったのだろう。