伝えないと。

 例え結果がどうであれ、私に恋をすることを思い出させてくれて樹くんに、ありがとうって言いたいんだ。

 そうだ!

 ノート!

 私は図書館ノートをお守りがわりに持ってきたことを思い出し、鞄からノートを取り出した。

 そして俯いて、それを抱きしめるように抱える。

 するとさっきまでの迷いが何故か消えて、勇気が湧き出てきた。

 ――きっと、ノートの彼が私を応援してくれてるんだ。

 私は顔を上げて樹くんを見つめる。

 樹くんはノート見ていて、なぜか驚いたような顔をしていた。

 急によくわからないものを取り出した私を、不思議に思っているのかもしれない。

 だけど私は、彼のその様子に構っている余裕はなかった。

 今を逃したら、せっかく出た勇気がまた縮んでしまう気がした。

 ――だから。


「好きです、樹くん。私、樹くんが好きです」


 私は言った。

 はっきりとした声で、樹くんを真っすぐに見つめながら。

 樹くんは目を見開いて私を見つめ返している。

 驚愕の面持ち。

 そりゃ、びっくりするよね。