私は「あー、やっぱり」と思うも、樹くんはなんだかほっとしたような顔をしていた。

 その様子に、一世一代の告白をする私よりも、樹くんの方が大変なことを言おうとしているのではないかと思えてきた。

 本当に、樹くんは何を言おうとしているの?

 気になったけれど、じゃんけんで負けたのは私だ。

 樹くんの話はその後聞けるんだから、まずは自分の告白に集中しないと。


「じゃ、じゃあ話します……」


 そう言ってから、私は大きく深呼吸をした。

 だけど緊張して口が震えてしまう。

 ど、どうしよう。

 言うって決めたのに、声が出てこない。


「栞……? 大丈夫? なんか辛そうだけど、そこまでして言わなくても……」



 樹くんが優しく声をかけてくれた。

 一瞬決意が鈍る。

 彼とは仲のいい友達でも楽しくやっているんだから、言わなくてもいいんじゃない?って。

 ――だけど。


『相手に想いを伝えるのってすごく大切だよ』


 頭の中に、ノートに書きこまれた例の彼の言葉が浮かんできた。

 そうだよ。

 せっかく生まれた恋心なんだ。

 ちゃんと言わないと。