私は放課後しか図書室に来ないので、休み時間に来ているのだろう。

 ノートに書きこまれた授業の話からすると、同学年らしいことは分かっている。

 だけどクラスまでは分からなかった。

 ――それと。


「たぶん男子だよね。筆跡からすると」

「――うん。そう思う」


 その字がすごく汚いというわけではなかったけれど、女子にありがちなかわいらしい丸みはないし、丁寧さも少し欠けているように思えた。

 それに自分のことを「俺」と書いていたことがあったから、十中八九男子だろうと思う。


「栞の勧めた本をいつも読んでくれるし、ちゃんと感想も言ってくれるし……。きっと真面目な文学少年だよ!」

「文学少年かあ……」


 彼がどんな人なんだろうと想像したことは何度もある。

 会話の内容から想像すると、きっと落ち着いていて静かな男の子なんじゃないかと思う。

 眼鏡がよく似合うような、知的でかっこいい男の子……なんて、夢見過ぎかな。


「イケメンかなー? ……あっ。付き合うならこの人がいいんじゃないの! 栞!」

「えっ! や、やめてよー! 名前も顔も知らないし、それに……」