久しぶりの学校だった。

 そろそろきつくなってきたなあと、他人事のように思う。

 だけど、クラスメイト達には気づかれたくなかった。

 もちろん、栞にだって。

 俺と仲良くしてくれているみんなには、最後まで暗い顔をしてほしくない。

 何も知らないまま、笑って俺と過ごしてほしい。

 そしてある日突然いなくなってしまう俺のことなんて、そのまま忘れて欲しいんだ。


「……樹」


 放課後、帰り道を歩くのがきつくなった俺は、中庭の花壇の縁に腰を下ろしてぼんやりと空を眺めていた。

 そんな俺の元に、悟が近寄ってきた。

 ザ・深刻とでもいうような、難しい顔をしていたので、なんだか笑ってしまった。


「そんな顔すんなって。別に俺、いますぐどうこうなるわけじゃねえから」

「……大丈夫なのかよ、具合」

「まあ、あんま大丈夫じゃない」


 俺は軽く笑いながら、だけど正直に言った。

 いとこである悟は、俺の病気について知っている。

 今さらこいつに対しては元気ぶったって仕方がない。


「次倒れたらさすがに入院だって医者に言われちゃったわ」

「――そうかよ」