確か、とても感動的な話だった覚えがある。

 読み終わった後、しばらくの間泣いてしまってお母さんに心配されたなあ。

 だけどどんなストーリー展開だったっけ。

 読んだのがあまりに前すぎて、私は細かい内容をすっかり忘れてしまっていた。

 泣いたってことは、すごく悲しいお話だったんだと思うけど……。

 うーん、だめだ思い出せない。

 背表紙に書かれたタイトルを読んで、記憶を呼び起こそうとした。

 タイトルは「何度記憶をなくしても、君に好きと伝えるよ」。

 だけど一向に内容は思い出せない。

 裏表紙には簡単なあらすじがあったので読んでみたけれど、物語の核心に触れているわけじゃないので、それだけじゃ記憶は蘇らなかった。

 気になったので読んでみようと、私はその本を手に取った。

 そして近くのソファに座って読もうと、移動した。

 だけどすぐにあることに気づく。

 ひとりで座るには、並べられたソファはやたらと大きかった。

 恐らく二人掛けのサイズだろう。

 そしてよく見ると、ひとりで座っている人はいなかった。

 みんなふたりでソファに腰を掛けていた。

 そう、ふたりで。