その次の日、樹くんは午後になって学校を早退した。

 まあ、よくサボりだって言って休む人だから、心配ではなかった。

 だけど彼がいない教室は私にとっては色を失ったただの風景に成り下がる。

 樹くんがいるだけで、世界のすべてが色づいてしまう。

 本当に恋って、不思議だ。

 お昼ご飯を一緒に食べた由佳ちゃんが「樹サボりすぎだよね~。帰りに遊ぼうと思ってたのにさあ」なんて愚痴っていて、私も「だよね!」と同調してしまった。

 今日は少しでも一緒の空間にいたかったのに。

 今日はって言うか、明日も明後日も毎日……。

 だけど樹くんは、軽い気持ちで学校をサボるんだから、私のことをそんな風には思っていないんだろうなあ。

 そんなことを考えているうちに、放課後になった。

 昨日に引き続き、今日も図書委員の仕事があったので、私は図書室へと向かう。

 今日は琴子は学校に来ていたけれど、まだ図書室にはいなかった。

 カウンターに入り、私はまず図書館ノートを手に取った。昨日私が返事を書いたばかりのノート。

 彼の病気が発覚し、そのことについて触れたので、返信が来ているのかとても気になっていた。

 昨日の今日で返事が来ている可能性は望み薄だったけれど、ノートを開いたら見慣れた男子っぽい文字の新しい羅列があって、私は目を見張る。

 午前中の休み時間や、昼休みに返事を書いてくれたのかな。