「樹くんも悟くんのいとこならたぶん知ってると思うけど、悟くんて本当はそんなこと言うような人じゃないと思う。……あの時も、からかわれてつい思ってもないことを言っちゃったって」


 私がそう言うと、樹くんはしばらくの間黙った。

 やっぱり樹くんも、悟くんの本来の性格を知っているんだろう。

 人を傷つけるようなことを言う人じゃないってことを。


「……俺なら、自分を好きだって言ってくれた子に、例え恥ずかしくてもそんなひどいこと絶対に言わないけど」


 樹くんはまだ怒っているようだった。

 どうしてここまで、私のことに怒ってくれるんだろう?


「樹くん……」

「もしかして栞、あいつのことまだ好きなの?」


 突然思いがけない質問をされ、私は固まってしまった。

 なんでそんなことを聞いてくるのだろう。

 しかも、なんだかやたら苛立った言い方に聞こえた。


「中学生の時に、もう好きって気持ちは消えちゃったよ。もちろん今だって……。ねえ、なんでそんなこと聞くの?」


 とても不思議だったから、私は樹くんにそう尋ねる。