ましてや、男の子とお付き合いをするなんてとんでもないことだ。

 そんなことを思い出して、しばらく黙ってしまう私。

 すると琴子は心配そうに私の顔を覗き込みながら、こう言った。


「……でもさあ、栞」

「え?」

「ずっとそういうわけにはいかないんじゃない? 本の中のヒーローじゃなくて、いつかは本物の男の子に恋しないとじゃない?」

「…………」


 私はまた、黙ってしまった。

 そんな日が私に来るのかな。

 今のままじゃ、未来永劫訪れないような気がする。

 でも私だって、このままじゃいけないことは分かってる。

 いつかは誰かと恋愛してみたいし、まだまだ先のことだけど、結婚だって……。

 だけどやっぱり、今すぐには難しそうだ。


「試しに樹くんと仲良くなってみたらどう? 彼なら、女の子の扱いに慣れてそうじゃない」

「えっ……。む、無理だよ。よりによってあんな次元が違うような人とは」

「次元は一緒でしょ……?」

「住む世界が違うってことだよ。いきなり大人気の樹くんなんて、ハードルが高すぎるよ。それならもっとおとなしそうな男の子の方が……」