帰りの車内は撮影前と違い、お互いに話題を探さなくても二人の会話はどんどん弾んでいく。
仕事のこと、家庭のこと、遊びのこと、趣味のこと。話すことはいくらでもあった。
そして信号で車が止まる。

「吉里さんは普段何しているんですか?」

「私は主婦だからいっつも家にいるの」

「へぇ、そうなんだ。わかった昼間はドラマ見たりワイドショー見たり?」

「うーん、テレビはあんまり見ないかな。」

「じゃあ家事をこなして、あとは昼寝とか?」

「昼寝もしないし、あれ? 私毎日何してるんだろう? 気がつくと夕方になってる!!」

「あははは、吉里さん。大丈夫ですか? 毎日何をしてたか覚えておいてください」


芳樹がハンドルを握りながら軽く笑う。
その笑い声、会話のテンポ、車の中の雰囲気、すべてが心地よかった。