私は先生の背中に両手を回して、ギュッとしがみついた。


先生がちょっと笑った声が、耳元で聞こえたあと、「あっ」って言う声が聞こえて……先生が私から離れた。


「えっと、ちょっとごめん……」


そう言って、私をソファに残したままでどこかに行ってしまう。


どうしたんだろう?


そう思っているうちに、すぐに大きめの段ボール箱を抱えて戻ってきた。


「先生、それ、何ですか?」


尋ねる私に、先生は少しバツ場悪そうに苦笑しながら中身を取り出した。


「……あ、」


それは、私がお願いして買って貰った、私専用のクッションだった。


「……ごめん、別れた後、仕舞い込んでた……」


段ボール箱の中には他にも、私が使ってた食器が入っている。


先生の性格からしても、こう言うのを見えるところに置いたままにするはずがないとは思ってたから、仕方ないんだけど……やっぱり自分の言った事──先生を傷付けたことにひどく心が痛んだ。



手渡されたクッションをギュッと抱き締めて「先生……ごめんなさい……」と呟くと、先生は私の頭をグシャグシャと撫で回した。


「お前が悪いんじゃないから、もう謝らなくて良い。それに、どっちかって言うと謝るのは俺の方だし」


先生はそう言って、段ボールの中を私に見せた。


無造作に入れられている食器のいくつかが割れていて……。



「ごめん、雑に放り込みすぎた……。また一緒に買いに行こうな」


本当に申し訳なさそうに言う先生に、私はコクリと頷いて、手を伸ばして先生の手をギュッと握った。


お茶碗と湯飲みにヒビが入って欠けていて、よく使っていたランチプレートは見事に真っ二つだったので、思わず綺麗に割れたものだ、と笑ってしまうほどだった。


でも、そのランチプレートを割った犯人と思われる、お揃いのマグカップは無傷で……。