いざなわれるようにやって来てしまった音の出所は、お世辞にも綺麗とは言い難い、荒んだ外装の小さな建物だった。
両側に立つ建物が洒落た美容室とコンビニなせいか、とても肩身を狭そうにして建っているようにすら印象を受ける。

漂う雰囲気からして恐らくライブハウスだと思われる建物の前で足を止めた私は、中から漏れてくる歌声に引かれるように扉を開けた。
人はこれを不法侵入と呼ぶのかもしれないが、それでも率直な好奇心には勝てなかったのだ。

間接照明に照らされた内装は、カウンター席が用意されていたり、壁には色々なポスターが貼ってあったり、ドラマなんかで見たことのあるバーのような作りになっていた。
けれど外にテーブルにはホコリを被った音楽雑誌がたくさん積み重なっていたり、置かれている瓶の中が空なのを確認して、恐らくバーとしての機能は果たしてないのだと悟る。