「いや! 碧とは、おさな、」

「岩倉さんっ」



再び私の言葉がさえぎられた。

さえぎったのは、碧だった……。



「僕の隣の席、どうぞ?」



そう言って、柔らかく微笑んでいるのは、まぎれもなく。

私の幼なじみの“九条 碧”だった。



「……だ、そうだ」



橘先生が隣でため息をつく。

なんで、私がため息をつかれるのよ。

私がため息をつきたいよ。


私は大きなため息を心の中でついてから、空いている席へ向かって歩いていく。

碧との距離が近くなる。

心臓がドキドキする。


碧と会うのは幼稚園のとき以来だろうか。


昔、家がお隣さん同士だった。

小学校へ上がると同時に、私が隣町へ引っ越すことになってから会っていない。

私が引っ越すとなったときは、大粒の涙を流していた碧。

小さい頃から持っている可愛さは変わっていない。


碧から視線を外すことが出来ないまま、隣の席にたどり着く。