ん?

私の席がない?


そんなわけ……。


と、思って私も教室を見渡す。


1個だけ。

1個だけ、空いている席があった。

それは、1番後ろの席で。

……窓際から数えて2番目の席。


つまり。



「碧と隣の席!?」



叫ぶ私に、橘先生の怒鳴り声。

今日、何度目の怒鳴り声だろう。



「ファンなのかもしれないが、一応クラスメイトだぞ!? 礼儀ってものが、」

「ファンじゃないです!」



このままだと説教が長々と続きそうなので、今度は私が橘先生の言葉を遮る。


遮ったのはいいものの。

次はクラスメイトが騒ぎ始めた。



「ファンじゃないの?」

「どうせ、嘘だろ」

「そう言って、九条くんの気を引きたいだけかぁ」



私への悪口が聞こえ始める。

これって、悪口?

ささやき声?

どっちでもいいけど、このままだと私の印象が悪くなる。

もう遅いかもしれないけど。