お前の隣は俺だけのもの。

碧はきれいな回し蹴りを入れる。

お腹に入るストレートパンチ。

男たちは、碧に叩きのめされ、完全に気を失っていた。



「陽菜っ」



碧は私を思い切り抱きしめた。



「ごめんっ」



碧が私を抱きしめながら、何度も謝る。

碧はなにも悪くないのに。

それどこか、碧は守ってくれたじゃん。

そう伝えようと、碧の背中に手をまわした瞬間。



「はいっ! カット!」



聞き覚えのある声が聞こえる。

驚く私と碧は、抱きしめあったまま固まった。


……カット?

なにそれ。

ドラマの撮影で監督がよく言うセリフみたいな……。


私たちは声のする壊されたドアへと視線を向ける。

そこに立っていたのは、怜央と潤だった。


偉そうに腕を組んでいる怜央。

携帯をかざしている潤。



「と、いうわけで。九条 碧は仕事熱心です」

「……は?」

「次回のドラマ“暴走族が恋をする”の主演、九条 碧は学校でも役作りをしているみたいでーす」



怜央のナレーション? に私と碧は戸惑うばかり。

潤は表情を崩さず、携帯を構えているし。



「以上! 放送部からお伝えしましたー」



ピコンッ!

怜央のナレーションが終わると同時に、携帯から機械的な音がする。

まるで、動画を撮っていたような、そんな感じだった。