「僕、恥ずかしくて。思わず、“初めまして”って言っちゃった……」



目をうるうるさせている碧。


やだっ。

私が泣かせているみたいじゃん!



「だ、大丈夫だよ! 気にしてないから、ね?」

「本当……?」

「本当だってば!」



だから、目をうるうるさせるのはやめて!

犬を連れて歩いているおばさんから、変な目で見られたじゃん!


『気にしていない』と何度も伝えると、本人はようやく笑顔を見せてくれた。


うん。

碧が笑っていてくれないと、私が泣かせたみたいになるから。


……なんか疲れた。



「陽菜ちゃん、帰ろ!」



そう言って、碧は私の左手を握る。

ぎゅっと、繋がれた左手は、だんだんと熱を帯びてくる。


今、秋だよね?

10月ってこんなに、熱かったっけ?


残暑が終わったばかりだな、と思っていたのに。


……碧は人の心だけじゃなくて、天候まで操れるのかな。

それだったら、すごい。