雪菜は和風の小説を書くことが多い。そのため、自然と着物が普段着になっていった。祖母が着物をコレクションするのが趣味だったため、いい着物に雪菜は毎日のように袖を通している。

「まあ、あと少しで小説は完成するし、今日一日はゆっくりしてもいいわよね」

雪菜はそう言い、原稿用紙を片付けた後、窓の外を見る。やけに寒いと思ったら雪が降っている。手入れがされた庭には、雪が積もっていた。

「わあ……!」

雪菜は防寒コートを羽織り、下駄を履いて庭に出る。外に出ると当然寒さを感じるが、雪菜は気にすることなく庭を歩く。ザクザクと雪を踏み締める音が小さく響いた。

このお屋敷は庭も広い。季節によって様々な花が咲き、大きくて立派な松の木も生えている。

雪菜が息をするたび、白い息が出ては消えていく。雪菜はしばらく歩いた後、松の木の下で足を止める。雪はまだ舞い落ちていた。

白い雪は全てをかき消し、冷たい風はどこか町を切なく見せる。しかし、そんな景色が雪菜は好きだ。儚く美しい。