壬生狼の恋ー時を超えたふたりー

「杉崎、泣け。
自分の気持ちを押し殺すな。

今はただ本能のままに泣け。

お前が泣き止むまで俺はここにいるから安心しろ。」

その言葉を聞いた私の目には涙が浮かび、やがて頬に一筋の線を描きながら落ちていった。

「私はまた人を殺めた…

しかも今回は同じ新選組の仲間だった人を…

首に刀が入ったときに怖かった…

頸動脈が切れたとわかったときに私はまた人を殺めてしまったんだって…

最後は自分の罪を認めていたのに、私は容赦なく谷先生を斬ってしまった…

谷先生の血が刀についた時にもう訳が分からなくなって、何も考えられなくなった…」

ぽつりぽつりと語る私の言葉を斎藤先生は何度も頷きながら聞いてくれた。

「愛望、よく聞け。
今から俺が言うことは決して愛望を慰めるために言うんじゃない。

谷の顔はすごく安らかな顔をしていた。

その顔からは一切苦しみなんて感じさせないほどに。

愛望は自分が谷を殺したと思っているんだろう?

でも、それは違う。

愛望は谷を苦しみから救ったんだ。

浅野の時を思い出せ。

介錯がつかなかった浅野は自分の意思で何度も腹をえぐったせいで苦しい顔をしていただろう。

お前は立派に谷の介錯を務めた。

谷が苦しまずに逝けたのだから。

今のままでは愛望を屯所から出すことはできない。

でも、俺はお前を見捨てたわけではない。

俺はこれ以上愛望が傷つかないために屯所から出さない。

俺は愛望が立ち直るまで何年でも待っている。

だから今はただゆっくりと心を休ませろ。」

悲しみと苦しみの感情に今私の心は支配されていて、今はただ泣くことしかできなかった。

斎藤先生が私に何かをやさしい声で語りかけているのに、私はその言葉を理解することはできなかった。