先に声を発したのは土方先生だった。

土方先生はなぜか笑いながら私の方を向いたのだ。

もしかしたら言ってはならないことを言ってしまい、呆れられてしまったのではないかとその瞬間私は落胆した。

「俺はどっちでも構わねぇ。

杉崎が組長になってから三番隊のことは気にかけていたけど、確かに心もとないなと感じていた。

でも杉崎には資質があると感じたから俺は何も口出ししなかった。

唯一の弱点はひとりで抱え込みすぎてることだな。

なんでもひとりで抱えて三番隊の隊士がふあんそうな表情を浮かべているのを何度か見てきたからな。

斎藤が組長に戻るというのであれば何も文句は言わないが、このまま杉崎が組長として三番隊を引っ張っていくのも見てみたい気もするがな。

斎藤、お前はどう考える?」

まさか組長として完璧ではないものの少しだけ土方先生に認められていたとは考えもしなかった。

私は自覚症状があったのだから。

組長に向いていないという。

私が困っているのを感じ取った斎藤先生はそれまで閉じていた口を開いた。

「俺としては杉崎が奮闘している姿を見てみたい気もするが…

でも大事な三番隊の隊士の心が壊れるのを見たいとは思わない。

だから、土方先生が認めてくださるのであれば組長に戻りたい。」

最初は何を言い出すのかと我が耳を疑ったが斎藤先生はやっぱり優しかった。

組長という仕事は誰よりも大変だと理解しているからこそ自分が背負うと。

「斎藤、お前が組長に戻れ。

杉崎、お前はこの経験を忘れるな。
斎藤がいつぞやのお前みたいにひとりで抱え込んでいたら助けてやれ。」

「わかりました。

必ず斎藤先生のもとで今後も精進を続けていきます。」