突然聞かされた組長の脱退は隊士たちの心を惑わすのに十分で隊士たちはしばらく動くことができなかった。

「嘘だろ、斎藤先生が…」

今三番隊の隊士らの心と頭を支配しているのはなぜそこまでして脱退するのかということであった。

やがて時間が経ち、心の整理がついた隊士らはひとりまたひとりと立ち上がり、部屋を後にしていった。

全員が部屋を後にし、日が暮れても私はその場から動くことができず、着物の袖を涙で濡らすことしかできなかった。

それから数時間後、もう涙が枯れてしまったのではないかと思われるほど泣いた私のもとに斎藤先生が戻ってきた。

そして私のことには目もくれず、自分の荷物をまとめ、それが終わった後に斎藤先生は私の前に座った。

「愛望、すまない…
こんな形でお前を置いてきぼりにすることになるなんて…

でもわかってくれ…
どうしてもお前を連れていくことはできない…

今の新選組には愛望が必要だから…」

斎藤先生も苦渋の決断をしたのだろう。

その口調には後悔の念がこもっていた。

それでも脱退するという意思は変わらずに…