そんな日が何日続いただろうか。

組長各は屯所を離れられないが京の見廻りはしなければならず、各組が組長不在で交代しながら見廻りを行い、私たち三番隊が見廻りから帰ってきたとき、三番隊の隊士らが斎藤先生の部屋に集められた。

誰もしゃべらない重い空気が部屋の中を完全に支配しようとしたころ、斎藤先生が口を開いた。

「俺は新選組を脱退し、伊藤先生に合流する。

俺についてくることは許さねぇ、後任の三番隊組長は杉崎を指名する。

杉崎、俺の代わりに三番隊を率いてくれ。

話は以上だ。
お前らさっさと部屋から出ていけ。
長居をしていたらお前らまで脱退を企てていたのではないかと疑われ、居づらくなるだろうから。」

突然告げられたのは斎藤先生の脱退だった。

三番隊の隊士らはみな話を呑み込めていないらしく、その場を動こうとはしなかった。

「斎藤先生、どうしてですか?

どうして新選組を裏切るような真似をするんですか?」

私はいたたまれなくなり、脱退の理由を斎藤先生に尋ねずにはいられなかった。

「伊藤先生とは同じ流派だから、意見が合うこともあった。

新選組は天然理心流が主だが、俺は北辰一刀流だ。

杉崎もこの気持ちはわかるだろう?

他の奴らと流派が違うことでどうしても稀有に見られるのが。

だから俺は伊藤先生についていくことにした。

たとえ、新選組を裏切ることになったとしても。」

斎藤先生が脱退を決めた理由は流派の違いが大きいという。

しかし私は納得なんてできるはずがなかった。

「私も斎藤先生についていきます。

斎藤先生のいるところが私のいるべきところです。」

脱退により、切腹を命じられても斎藤先生と一緒にいられるのであればそれでよかった。

しかし、斎藤先生がそれを許すことはなかった。

「俺はお前を殺してでも伊藤先生と合流する。

お前だけじゃない。
俺について来ようとするものは全員斬ってでも構わない。

杉崎、お前はここに残れ。

お前の居場所は俺のところではなく、ここだ。」

斎藤先生はそれだけ言い残すと立ち上がり部屋から出ていってしまった。