この時、敵8人に対し、新選組24人と人数的には圧倒的に有利な状況となっていたにも関わらず、新選組は乱闘により土佐藩藩士をひとり殺害、現在までに捉えた人数はわずか1人だった。

「大石隊はなぜ来ない…

浅野が伝えに言ってるはずじゃないのか…」

敵と刀を交えながら、原田先生は近くにいた新井先生に話しかけた。

「おかしいですね…
このままでは予定していた包囲網が完成せずに逃げられてしまう…」

少しずつ退路ができてしまい、土佐藩の藩士たちは先ほどよりも勢いが出てきたようだった。

そんな時、三条大橋の影に隠れるように座り込んでいた浅野薫を発見した仲間の新選組隊士は浅野に対して罵声を浴びせた。

「浅野、さっさと大石隊を呼んで来い!
てめぇの役割はなんだ?」

大石隊が来ない理由、それは斥候の浅野薫が町屋で待機している大石隊を呼びに行っていなかったからである。

そのため、大石隊は今まさに土佐藩の藩士らと新選組が戦っていることなど知る由もなく、敵の出現を知らせる浅野が来るのを待っていたのだ。

本来大石隊を呼びに行くはずの浅野が呼びに行くどころか敵に気づかれないように三条大橋の隅に隠れていると知った原田先生は敵の刀を自分の刀で押さえながら浅野へ声をかけた。

「浅野、大石隊を呼びに行ってくれ…

このままでは土佐藩を捕らえることができず、幕府に示しがつかない…」

原田先生は浅野を怒るのではなく、お願いといった形で呼びに行くように頼んだ。