翌日、私は体の痛みで目が覚めた。

「あれ、ここどこ？」

寝ぼけ眼の目をこすりながらあたりを見回してもここの場所が分からない。

なぜか私は着物を着ていて、薄い敷布団に薄い掛布団をかけて寝ていたらしい。

「まだ夢の中か…
痛っ…」

右のほっぺを少し強めにつねってみると、夢のはずなのに、とても痛かった。

その痛みで眠気は完全に吹っ飛び、意識ははっきりした。

「琴、起きているならさっさと仕込み手伝ってよ。
人を雇えるお金がないんだから、あんたも手伝いなさい。」

私は琴という名前を聞いてここがどこなのかやっと理解した。

琴というのは昨日撮影していた映画での私の名前で、きっとここは撮影現場なのだろうと。

そして朝のシーンを撮影している時に本当に寝てしまって、一瞬混乱しただけなのだと。

「はい、今行きます。」

私は琴として返事をし、いつもの着物に着替えるとすぐに台所へ向かった。

「琴、今日はちゃんと取り立てなさいよ。
あんたがいつもお武家様からお金をもらわないから、この家は貧乏なんだ。」

「はい、すみませんお母さま。」

この時私はまだ気がついていなかった。

撮影機材も撮影スタッフも、他の出演者もいないということを。