局中法度が制定されてからも、新選組は変わらずに存続していた。

しかし、事件は何の前触れもなく起きた。

それを発見したのは沖田先生であり、そのまま隠すか悩んだものの、最終的に近藤先生にもっていったのだ。

「山南さんの部屋の机上にこのようなものが…」

『新選組の役に立つことはもうできないだろう。

死ぬ前に一度、江戸を見たい。

俺は江戸に行く。』

わずか三文の短いものであったが、山南先生の思いはすべて込められていた。

私が新選組に入隊する前、山南先生は左腕を深く負傷しており、現在も屯所から出ることはできないほどだった。

山南先生はいつも笑顔で、それでも心の奥に愁いを帯びていて私はとても心配に思っていた。

「杉崎に追わせる。

沖田、杉崎に今すぐ江戸へ向かうように伝えろ。」

「私に行かせてください。

必ず、必ず連れ戻しますから…」

後にも先にも沖田先生が近藤先生の命を逆らったのはこれだけだった。

「わかった。
必ず、連れて来い。」

「ありがとうございます。」

新選組の屯所へ戻るということは死を表しているのだったが、沖田先生は自分の手で行くことを深く切望したのだった。

その日のうちに沖田先生は支度をまとめ、旅人に変装し、江戸までの道のりを歩くことになっていた。

沖田先生のいない間、一番隊は三番隊に任され、斎藤先生は休みなく、見廻りや稽古にいそしんでいた。

そして私も、斎藤先生の負担を減らしたいという一心で、斎藤先生の代わりに三番隊の稽古をみたりして沖田先生の帰りを待っていた。