事態が動いたのは、それからひと月も経たないときだった。

「本日、炭薪屋枡屋喜右衛門のもとへ御用改めに入る。
出動は一番隊、三番隊。

決して殺さず、屯所まで枡屋喜右衛門を連れてくること。

また、尊王攘夷派に関するものがあった場合、それらを持ち帰ること。

以上!」

朝餉が終わった後、一番隊と三番隊の隊士が近藤先生の部屋に呼ばれ、今日の御用改めに関することが伝えられた。

「杉崎、お前にとってはこれが見廻りを除いた初出動となる。

足手まといにだけはなるなよ。」

「はい。
皆さんの足手まといにならないよう、自分でできることを頑張ります。」

土方先生からそう言われたが、私はこの話を聞いた時からやる気があふれていた。

斎藤先生の為にも必ず役に立つと。
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後半刻ほどで日が暮れようとする頃、一番隊の隊士と三番隊の隊士はだんだら羽織を着用した状態で屯所前へ集まった。

隊列を組み、枡屋喜右衛門のいる炭薪屋へ向かい、裏口を数名の隊士で包囲した後、声をあげた。

「われら新選組。
御用改めである。

抵抗するものは捕縛する。」

この言葉を合図に私たちは中へ乗り込んでいった。

枡屋喜右衛門の捕縛は沖田先生、斎藤先生、あと数名の隊士に任されており、私の役割は長州などとの関係性を探すということであった。

枡屋喜右衛門はすぐに新選組にとらえられ、武器や長州藩との書簡も見つかった。

それらの証拠はすべて新選組の屯所へ持ち帰ることになり、枡屋喜右衛門も両手を縛られた状態で屯所へ連行された。