「時間があるから、今日のうちに刀を買いに行く。
さっさと準備しろ。」

部屋に戻るや否や、斎藤先生にそう言われ、私は急いで準備をした。

「お待たせしました!」

先に門のところで待っていた斎藤先生に声をかけ、私は斎藤先生と一緒に鍛冶屋へやってきた。

「この中から好きな刀を選べ。」

太刀だけでも細身のものから太いものまで、長いものから短いものまでさまざまあったので、私は気になったものを何本か手に取り、持ち心地などを確認していった。

「これにします。」

半刻後、私が決めたものは、斎藤先生のものよりは細身で長い太刀と一般的な小太刀を選んだ。

お会計を済ませ、自分の腰に差してみると、自分も新選組の一員になれたのだと感慨深くなった。

「斎藤先生、ありがとうございます。」

斎藤先生が私のことを認めてくれたから、私は一人前の剣士のなれた、そう思うとお礼を言わずにはいられなかった。

「あぁ。
喜んでいられるのも今のうちだ。

真剣を持つということは他人の命を奪うということを忘れるな。
もしかしたら、その刀でお前は俺を斬ることになるかもしれないということを。」

急に物騒なことを言う斎藤先生に驚いたものの、ここは私がいた時代ではないということを深く痛感することとなった。

「はい、肝に銘じておきます。」

「真剣を持っているのであれば心を鬼にしろ。
そして自分の信じるままに刀を振るえ。」

背中越しにそう語る斎藤先生は何か深い傷を心に抱えているように思えて仕方がなかったが、私はそれを聞くことができなかった。

「これ、お前にやる…」

私が刀を選んでいるときに買ってきてくれたのだろう、私に装飾の入った小刀を渡した。

「これは身の危険を感じたときに相手の懐に投げ込め。

小刀を持ち歩いている隊士は俺の他にはいないが、きっと役に立つ。

「ありがとうございます。
でも、これを使わないのに越したことはないですね。」

私は斎藤先生から小刀を受け取ると大事そうに懐へしまった。