壬生狼の恋ー時を超えたふたりー

俺たちが五稜郭に到着してから間もなく、新政府軍はさらに勢力をかけて俺たちを制圧しようと動いた。

海陸両方から函館を攻め込まれた俺たちは絶体絶命に陥っていた。

俺は陣を率いて戦場から新政府軍と戦っており、一時は相手の軍艦を沈没させるなど勝機が見えたものの、乗っていた船が座礁してしまい、俺たちは下船を余儀なくされてしまった。

俺たちの陣は一旦後方へ撤退し、難を逃れた。

俺は馬に乗り、陣の指揮をとることにした。

馬に乗っていた方が高い位置から周囲を見渡すことができるからである。

この考えは功を奏し、俺たちの陣はほとんど犠牲を出すことなく、確実に新政府軍を追い詰めることができた。

このまま戦いを続ければ勝てるのではないか、そう思った矢先のことだった。

同じ新選組隊士が守備を固めていた弁天台場が新政府軍に包囲されてしまったのだ。

そこを守っていたのはよりによって新選組隊士だとは…

俺は心の中で助けに行くべきか、ここに残って戦うべきか悩んだ。

「助けに行きましょう!」

助けに行きたいのはやまやまだったのだが、敵の陣中に乗り込むということはかなり危険なことである。

俺がどうするべきか決めかねていた時、仲間の一人がそういった。

「土方さんの仲間なら、俺たちだって助けに行きたい。

行きましょうよ!」

最悪の場合、どうなるかわかっているのだろうか、俺は心の中でそう思った。

「でも、行くということは危険にさらされるということ…」

自分一人が危険にさらされるのであればいいが、自分の私念のために関係のない人が巻き込まれるのは嫌だった。

「ここで戦っている以上、どこにいたって危険には変わりない。

助けに行きましょうよ!」

「あぁ、俺はお前たちと同じ陣に入れてよかった。

でも全員で行ってしまってはここでの戦いに負けてしまう可能性がある。

俺についてきてくれる人はいるか?」

俺のその問いに数名の仲間が志願してくれた。

「必ず生きてここに戻ってくる。
もちろん島田魁たちも連れて!」

俺はこの日10名の仲間を引き連れて弁天台場へ向かった。