壬生狼の恋ー時を超えたふたりー

これ以上、新政府軍が二股口へ攻めてくることはなかった。

まるで嵐の前の静けさのように恐ろしいくらいに。

その異変に気がついたのは2日後のことだった。

4か所で新政府軍の進軍を抑えていたものの、勝てたのは俺たちの陣だけだったのだ。

他の陣は五稜郭へ撤退をしているという報を受けた俺たちはこのままでは退路がなくなってしまうということを恐れ、俺たちも撤退することにした。

「俺たちは負けて逃げるんじゃねぇ。
一度他の陣と合流することが重要だと判断したからこそ撤退するんだ。」

まるで退路を塞がれるのを恐れたため撤退したようだったのだが、俺は仲間の士気を下げないためにあえてそう告げた。

ここで撤退したのはいい判断だった。

翌日には二股口を挟むように新政府軍が進軍してきたのだ。

もし、一日撤退が遅れていた場合、俺たちは負けていたかもしれなかった。