「まずは盛岡まで行く体力をつけないとな。

幸いなことに愛望がある程度体力を取り戻し、新しい拠点が見つかるまではここを使っていいという許可をくれた。

愛望が療養している間に俺は先に準備を進めようと思う。

ほんの少しだけ分かれることになるが待っていられるか?」

少しの間分かれて生活すると言っても必ず迎えに来てくれるということがわかっているから私は笑顔で「お待ちしております」と答えることができた。

「俺がいない間、何かあったら松本先生を頼って。
本当は俺以外の男に愛望を守らせるなんて癪に障るから嫌だけど、松本先生は新撰組時代からの信頼できる医師だから。

松本先生曰く、あとひと月ぐらいすれば今まで通りに食べられるようになるらしいからそれまでは我慢しないようにとのことだ。」

一月もこの苦しみが続くのか、という悲観的な感情はわかなかった。

自分のおなかに一さんとの新しい命が宿っていると思うと今から愛おしくて愛おしくて仕方がなかった。

「妊娠は病気ではないし、私には愛する旦那様がいるから大丈夫です。

一さんが準備してくれたところに行ける日を指折りにして楽しみにしています。」

私はそう言って一さんに笑顔を向けた。

一さんも笑顔で私のことを優しく抱きしめてくれた。

翌日、一さんは単身で盛岡へと旅立っていった。