「本名はなんていうの?」

近藤先生が私に最初に聞いたことは名前だった。

まるで私が女だと前から知っていたかのように近藤先生は落ち着いていた。

でもこれは私の処遇が、切腹を命じることが決まっているから、近藤先生はこんなにも落ち着いているのだろうと思った。

「杉崎愛望です。」

私は聞かれたことだけをこたえようと、名前を言って再び近藤先生の方を向いた。

「ずいぶん変わった名前だね。
出身はどこ?」

近藤先生はまるで普通の日常会話をするかの如くまた私に質問をしてきた。

「いわ、南部の盛岡です…」

私は岩手県と答えそうになったが急いで南部と言い直した。

私のことを聞いてくる近藤先生の思いをくみ取りきれていない私は、次は何を言われるのだろう、とずっと不安に感じながら、近藤先生の言葉を待った。