マンションを出た車は、泳ぐように国道を西へ。ウィンドゥの隙間から抜ける風に髪を攫われながら、ミステリツアーのドライブ。心地いい清涼感。

フロントガラスに切り取られた水色の高い空は、うっすら雲を引いて晴れ渡る。ハンドルを握る隆二もどことなく上機嫌だった。

チョコレート色のジャンパースカートに、フリルネックのブラウス、ボレロジャケットを羽織ったあたしは。最近、肩につかないくらい髪を短くした。ゆるふわカールの毛先は遊ばせてナチュラルに。セルドォルのオーナー、由里子さんのショートヘアにちょっと倣いたくなったのもある。

ロングかミディアムをキープしてたのは、まとめ髪ができるようにで。綺麗に結った着物姿のお母さんを、物心ついた頃から見て育ったあたしにとって、しきたりみたいなものだった。

これからも極道の娘には違いないけど、独り立ちした決意表明というか。思いきり。

なんだか体ごと軽くなったの。
背中も、自在に飛べるスマートな羽根に生え替わって。