私は勝ち組だと思ったの。

 絵本の中の花の妖精みたいな桃色の髪。南国の海のような綺麗な瞳。文句の言いようのない可愛らしい顔立ちで、しかも王子様との婚約が決まっている御令嬢。

 ね? 今回の人生は、幸せまっしぐらだと思うでしょう?

「嘘でしょ……」

 ずっと病床についていた私が死んで、この『リイナ=キャンベル』だと気が付いた時、リイナは十五歳のちょうど女の子盛り。今回の人生では、現世からの夢だった『素敵な恋をしたい!』という願いを叶えるべく、お見舞いに来てくれた婚約者であるエドワード=ランデール王子と、意気揚々ご対面したのだ。

「ぐ、具合は……どうかな、リイナ。グフフッ」

 そこには、白豚がいた。グフフと笑う、気持ち悪い二足歩行する金髪の豚。

 無駄に立派な衣服を身に着けた白豚は、とにかく脂ギッシュだ。至る所にニキビがあり、「グフー」と呼吸をするたびに、黄色い息が出ていそう。背が高い分、余計に体積が大きいのが厄介そのもの。せっかくの金髪もギトギトしており、あげくに前髪が長くて野暮ったいにも程がある。

「きょ、今日もね、リイナの好きなお菓子を持ってきたんだ。快気祝いとして特別なデザインで焼いてもらって、君の好きな紅茶味もたくさん詰めてもらったから――――」

 可愛らしい箱を私に見せながら一生懸命説明する婚約者を前にして、私は歪な笑みを浮かべるしかなかった。

「ご、ごめんなさい。目眩が……」

 前世とは違い、体調はすこぶる良い。だから、これは間違いなく気分的なもの。

 それでも頭を押さえた私に、その白豚はションボリした様子で「そそ、それなら、ゆっくり……休まないとね」と、そそくさ帰って行きましたとさ。