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 ガタゴトと揺れる馬車の荷台の上で大きく伸びをする。

 乗り心地を聞かれれば快適とは言えないが吹き抜ける緑の薫りを含んだ風と燦々と降り注ぐ太陽のおかげもあって苦にはならない。

 揺れさえなければ眠れるほどだ。


 市街地から四時間、乗り合い馬車もない片田舎を移動する手段となれば徒歩か今のように地元の人間の手を借りるくらいしかない。

 ちょうど目的地の山裾の屋敷の近くまで行くという農家の老人の馬車の荷台に乗せてもらったのが昼過ぎも回り一番ゆったりとした午後の頃合だった。

 この調子で行けば日の暮れる前に目的地には着きそうだ。