高校物語 ー秋ー

渡辺さんと如月くんかぁ、とつぶやく香耶に、本人たち、起こさないでねと言い、前を向く。いくら何でも、ずっと後ろ向いていたら、さすがに酔ってきてしまう。それでは、金閣寺でうまくいかない。


「神谷、さっきの乗り込みサンキューな。おかげでスムーズだったよ」


「いえいえ、気にしないでください。これも仕事です。それに、如月くんも手伝ってくれましたし」


私一人じゃないですよ、と謙虚さを見せることで、きっと先生たちの中で私に加点がつく。全部そうやって計算してるわけじゃないけど学級委員だって、大学進学を考えて始めた仕事。そこらへんも、うまくやらないと。


「神谷さん、金閣寺って、自由行動終了何時だっけ?」


予定表忘れちゃって、と付け加えて聞いてきた通路を挟んだ隣の席の子に、時間を伝える。これも、大事な仕事。


「ありがとう」


ほっとしたような顔に、癒される。こうやって、喜んでもらえると、たとえ進学のための仕事もやりがいが増えるというもの。


「えー、もうそろそろつきますよー」


バスの運転手さんが連絡する。腕時計を確認する。大体、予定表通りの時間帯だ。