2年生、5月。
 GW明けの暖かく優しい日差しが気持ちいいこの日、僕には必要もない塩分糖分タンパク質炭水化物食物繊維エトセトラ……。薄いパンに挟まれた食材は一応はバランスの良い“弁当”と言えるだろう。それらを口に放り込んで咀嚼する。

 噂に聞く味という概念はわからない。食感の違いだけを感じながら、嚥下(えんげ)する。これらの作業が煩わしくて、以前はゼリーだけを摂取していたのだけど、健康に良くないからと周りに言われて仕方なくこうしている。

 広い屋上をぐるりと囲んだフェンスには「危険! もたれるな!」のプレートが貼ってあるにも関わらず、何人かの生徒はそれを背にして談笑している。
 けれど、僕にメリットがあるわけじゃないからわざわざそれを注意しに行ったりなどしないし、どうせ何も起きない。


「圭? どうした? ボーッとして」

「ん、ううん。ご飯食べた後だからやっぱり眠いなあって」


 嘘だ。食後の眠気に襲われるというのは他人が言っているのを聞いたことがあるだけだ。