*****宇谷 圭



 僕が生まれたのはどのくらい前だっただろうか。

 一応16歳の宇谷圭として一般的な男子高校生としての生活を送ってはいるけれど、実際はその何倍か生きている。

 僕は自身について何も知らない。仲間もいないし親もいない。見たことがない。

 ようやくこの世界で生きていく立ち回り方を身につけた頃には、年号が2回変わっていた。


 人間は、顔を自在に変えられないらしい。
 人間は、お腹が減るらしい。
 人間は、体調を崩すことがあるらしい。
 人間は、丸太を素手で折るような力はないらしい。
 人間は、いろんな感情があるらしい。
 そして人間は、成長する。人間は、命を繋いでいく。

 人間だけじゃない、この世界色んな生き物がいて、みなその流れの中で生きている。


 ……ここでひとり時間が止まったかのようにたたずんでいる僕は、何者だ?


 名前を変え、顔を変え、生きている。僕は生きている。
 けれど、僕はいつも……いつかは、置いてきぼりになるんだ。


 何のために僕みたいなのが生まれて来たんだろう。
 僕だって、人間になりたい。みんなと一緒になりたい。
 空腹を感じたり、自分で姿を調整しなくても勝手に歳をとってみたい。


 だから、


 たくさんの人と関わるようにした。
 こんな風になりたいという人間の近くにいるよう、たくさん話しかけ、仲良くもなった。


 その1人が、クラスメイトの古道 寛だった。

 周りをよく見ていて、困っている人が居たら助けてあげて、人当たりがよくて、誰の悪口も言わない。一緒にいると楽しい。ゆえに、人気者。

 逆に言えば欠点が見つからなくて、僕としてはもう少し未熟な人間くささのようなものが感じられる方が参考にはなるのだけれど。なに、お手本は彼だけではないのだから問題はない。