嫌な予感はすでに胸に渦巻き始めている。


そのときだった、保険の先生が近づいてきた。


「警告音が聞こえてきたけど、ここから出られないの?」


その質問にあたしたちは頷いた。


隠してはおけないことだ。


「そう……。これ、よかったら持っていて」


そう言って差し出されたのは保健室のスペアキーだ。


「鍵を壊されてしまったら終わりだけど、それでも役立つかもしれないから」


先生はあたしの手に鍵をしっかりと握らせた。


「ありがとうございます」


小さな声でお礼を言う。


けれど、これから先どうすればいいのかわからない。


「きっと大丈夫だから、ね?」


不安を察したように先生があたしの背中をなでてきた。


それはまるでお母さんの手のようで安心できた。


そうだ。


家には戻れないって両親に連絡しなきゃ。


そう思ってスマホを取り出す手が小刻みに震えた。


思うように操作できなくて戸惑う。


「あれ、おかしいな」


呟いたとき、涙が頬を流れて行った。


静かになった学校内でようやく少しだけ緊張の意図が解けて、我慢していたものが一気にあふれ出す。


あたしは我慢できなくなり、先生にすがりつくようにして声を上げて泣いたのだった。