そんな会話が聞こえてきたかと思った次の瞬間、ドアが乱暴に蹴られる音が響いた。


あたしはビクリと体を震わせて聡介にすがりついた。


聡介はあたしの体をきつく抱きしめる。


トイレに逃げ込んだ時よりももっと重たく、鈍い音が響き続けている。


「このままじゃまずいな……」


大志が険しい表情で呟く。


いくら大志でも、大人数で襲ってこられたらひとたまりもなさそうだ。


外にいる生徒たちは大声で笑いながらドアを開けようとしている。


それに気が付いた他の生徒たちまでこぞってドアを壊そうとしている。


それは、すでにここにあたしたちがいるとわかって行っているようにも見えて寒気がした。


嗅覚だけで獲物を捕らえる野生動物みたいだ。


ガンガンと乱暴に殴り、蹴られるドア。


衝撃が加わるたびに、ドアは心もとなくゆれる。


「おい、カギ借りて来たぞ!」


その声にあたしたちは目を見交わせた。


誰からこの教室の鍵を持ってきたのだ。


「ど、どうする!?」


花子が声を上ずらせて言う。


その顔は真っ青だ。


「逃げるしかないだろ!」


鍵が開けられる寸前、一は立ち上がり、後方のドアへと駆け出していた。


その時なぜかあたしの手が握られていた。


隣にいたせいか、とっさにつかまれたまま一緒に走り出す。


すぐに他の4人も立ち上がり、走りだしていた。


後方のドアの鍵を開けた瞬間、前方のドアの鍵がひらいた。


そして大きく開かれると同時に廊下へ飛び出す。