さっきまで無事だった教科書が、今は真っ黒なマジックで塗りつぶされている。
「じゃあ、次のページを北上さん読んで」
こんなときに限って今日はよく当てられる。
そういえば今日の日付はあたしの出席番号だったっけと思い出した。
自分の出席番号をのろいながら教科書を持って立ち上がる。
幸い指摘されたページは読める状態だったけれど、声が震えてうまく出てこない。
水にぬれた体はどんどん冷えてくる。
先生だって少しは考えて当ててくれればいいのにと恨みたくなったときだった。
「早退してもいいですか」
と、突然そんな声が聞こえてきてあたしは驚いて振り向いた。
すると聡介が立ち上がっているのだ。
みんながざわめいた。
「まだ授業中ですよ」
「わかってます。でも、見たらわかりますよね?」
聡介はするどい視線を教師へ向ける。
こんなずぶ濡れのままで授業を受けるような日常、あたしたちは送ってきていない。
そうとわかると途端に教師は押し黙ってしまった。
「あたしも早退したいです」
教科書を置いて言う。
「何言ってんだよ。お前らいなかったらつまんねぇだろ!」
「そうだよ! 逃げるなんて卑怯!」
「なんのための法律だよ!」
あちこちから飛んでくる言葉にあたしはうつむいた。
「じゃあ、次のページを北上さん読んで」
こんなときに限って今日はよく当てられる。
そういえば今日の日付はあたしの出席番号だったっけと思い出した。
自分の出席番号をのろいながら教科書を持って立ち上がる。
幸い指摘されたページは読める状態だったけれど、声が震えてうまく出てこない。
水にぬれた体はどんどん冷えてくる。
先生だって少しは考えて当ててくれればいいのにと恨みたくなったときだった。
「早退してもいいですか」
と、突然そんな声が聞こえてきてあたしは驚いて振り向いた。
すると聡介が立ち上がっているのだ。
みんながざわめいた。
「まだ授業中ですよ」
「わかってます。でも、見たらわかりますよね?」
聡介はするどい視線を教師へ向ける。
こんなずぶ濡れのままで授業を受けるような日常、あたしたちは送ってきていない。
そうとわかると途端に教師は押し黙ってしまった。
「あたしも早退したいです」
教科書を置いて言う。
「何言ってんだよ。お前らいなかったらつまんねぇだろ!」
「そうだよ! 逃げるなんて卑怯!」
「なんのための法律だよ!」
あちこちから飛んでくる言葉にあたしはうつむいた。



