聡介があたしの不安を払拭するように手を握り締めてくれる。


その手は汗ばんでいて、震えている。


聡介の手を握り返そうとしたときだった。


突然ドアがバンッ!と蹴られたのだ。


あまりの音に身を縮める。


「おい! 出てこいよ商品!」


「逃げ回ってんじゃねぇよ!」


続けざまに何度も蹴られて背中に冷たい汗が流れた。


トイレの弱いドアじゃどこまでもつかわからない。


「ほら、このままドア蹴破ることもできるんだぞ?」


それが脅し文句なんかじゃないことはわかっていた。


「くそ……」


聡介が奥歯をかみ締めるのがわかった。


ここから逃げるためにはドアを開けるしかない。


だけどドアの向こうには敵しかいない。


完全に八方塞だ。


もう、勢いよく飛び出して逃げ出すしか方法はない。


「聡介、あたしまだ走れるよ」


小さな声で言った。


聡介は驚いた表情をこちらへ向ける。