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仕方なく帰宅したあたしは、いつも通り学校へ向かった。


頬に絆創膏を張っているものの、できるだけうつむいて顔を上げないようにして歩く。


いつ、誰に商品だとバレるかわからない恐怖心から、学校に到着したときには汗まみれになっていた。


今すぐ着替えたかったが、もちろん制服の替えなんて持ってきていない。


B組の教室に入っても誰にも挨拶せずに、すぐに自分の席についた。


うつむいて教科書を読んでいるふりをする。


そうしている間にも緊張で喉がカラカラに渇いてくるのを感じる。


「あ、恵美来てたんだ、おはよう!」


エリカがいつも通りの調子で声をかけてきて、ビクリと体を震わせた。


あたしはゆっくりと顔を上げ、そして無理やり微笑んだ。


しかしうまく笑えていなかったようで、エリカはすぐに不振そうな表情に変わった。


「お、おはようエリカ」


あたしはいつも通りにしたいのに、やっぱり声も震えてしまった。


これじゃすぐに商品だってバレちゃう……!


「どうしたの恵美。体調でも悪いの?」


「ううん。大丈夫だから」


顔を覗き込まれそうになって、とっさに伏せた。


しかし、それでは頬に貼った絆創膏を隠すことができなかった。


「それ、怪我したの?」


指差して言われてハッと息を飲む。


どんどん血の気が引いていくのがわかった。


「恵美? やっぱりなにか変だよ? 体調が悪いなら保健室に行く?」


心配してくれるエリカに「大丈夫だよ。ちょっとトイレ」と答えて、席を立った。
このままじゃすぐにバレてしまう。


一旦教室から出て落ち着かないと。