そんな……。


それじゃ、そのチップを取り出さないことには街から出ることもできないということだ。


あたしはグッタリと座席の背もたれに身をゆだねた。


どこにも逃げられない。


日常生活も続けなきゃいけない。


そんなのってないよ!


「警告音が鳴り始めて5分経過すると、自動的に心臓は停止する。そうも書かれてた」


お母さんの説明に運転席のお父さんが大きく息をのんだ。


「心臓が停止?」


そしてお母さんに聞き返す。


「そうよ。だから商品はただちにその行為をやめることになるの」


「警告音って、普段と違う行動をしたときにだけ鳴るの?」


聞くと、お母さんは左右に首を振った。


「それはわからないわ。もしかしたら、政府にとって不都合なことが起こる場合にすべてなるのかもしれないし」


「それじゃ、あたしは誰かに狙われてなくても、ずっと命の危険があるってこと?」


その質問には2人とも無言だった。


答えられないけれど、肯定されているのだとすぐにわかった。


「……とにかく、今は帰ろう」


お父さんが力なく言ったのだった。