「嘘でしょ。今のあたしの体内から聞こえてきてた?」


「そうかもしれない。予想外の行動を起こすと警告されるのか……」


ミラー越しに見たお父さんの顔が青ざめ、今にも倒れてしまいそうだ。


「予想外の行動って? あたしが街を逃げだそうとしたことがバレてるってこと?」


お父さんが力なくうなづく。


そんな……!


「商品はいつも通りの行動をとらなきゃいけないっていうルールがあるわ」


沈黙が降りてきそうになったとき、お母さんが呟いた。


「え?」


「1度だけ、人権剥奪法について調べたことがあるのよ。もし万が一、娘たちがターゲットになったらと思って」


それが現実のものになってしまったようだ。


「商品はいつも通りの日常を送ること。ちゃんと学校へ行って、授業を受けろってことよ」


「そんなの無理だよ!」


あたしは目を見開いて講義する。


いつ、誰に攻撃されるかわからないのに授業なんて受けていられない。


学校内には沢山の生徒や先生がいて、敵だらけだ。


そう考えたとき、一瞬だけエリカの顔が浮かんできて胸が痛んだ。


エリカがあたしを攻撃するはずない。


そう思ってみても、不安がよぎる。


「でも、日常以外のことをしようとしたら、警告音が鳴ったわ。あなたの体にはチップが埋め込まれているから、それが反応したのよ」