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「恵美、そろそろ起きろよ」


そう声をかけられてあたしははじかれたように上半身を起こした。


一瞬保健室の壁の白さに頭痛を覚える。


ちゃんと眠ったような、ぼんやりとしか眠っていないような不思議な感覚で、体のだるさは少しだけマシになっていた。


カーテンの向こうへ視線を向けると聡介以外の3人の姿があった。


あたしはあわててベッドから降りた。


「みんな無事だったんだね!」


一様に青ざめてはいるけれど、元気そうだ。


ただ、ひとり、舞が手に包帯を巻いているのが見えた。


「それ、どうしたの?」


「先生に切られた……」


舞はとても小さな声でそう返事をして、うつむいた。


「もう手当てはしたし、傷は浅いから大丈夫だ」


変わりに大志がそう教えてくれた。


しかし舞はうつむいたまま顔をあげようとしない。


「担任の先生だったの。すごく優しい先生で、相談にもよく乗ってくれた」


1年C組の担任はたしか女性だったはずだ。


色白で、笑った顔が少女みたいにかわいくて、ふんわりとした雰囲気を持つ先生だったと記憶している。


そんな先生が狩に参加して、しかも自分のクラスの生徒を攻撃したなんて想像もできないことだった。


だから舞のショックは大きいみたいだ。