『恐怖アプリ』のおかげで自分たちの足でしっかり立つことができている。


だからあたしはまっすぐに美紀を見つめることができた。


美紀はあたしの視線に一瞬戸惑ったようだけれど、すぐに睨み返してきた。


「なにその目。生意気なんだけど」


そう言ってあたしの肩を押す。


体のバランスを崩したが、すぐに両足で踏ん張った。


そしてまた睨み返す。


と、その時だった。


美紀があたしへ手を伸ばしてきたかと思うと、鞄を奪い取っていたのだ。


まさか鞄を奪われるとは思っていなかったから、油断していた。


「なにすんの!」


すぐに声を上げるが、美紀は鞄を開けると中身を地面にぶちまけた。


そしてふみ付ける。


それを見た靖と愛子が同じように夢の鞄を奪い取り、逆さまにして中身をぶちまける。


まるで物まねするように汚れた靴でそれを踏みつけ始めた。


「あたしの彼氏を笑った罰」


美紀はおかしそうに笑いながら言うと、ポケットからタバコを取り出して火を付けた。


慣れた手つきで一服吸うと、あたしの教科書の上に落とす。


燃え移るかと思ったが、幸いタバコの火はすぐに消えてくれた。