「ヒッ!」


と、思わず声が漏れる。


夢が散乱した教材を踏まないようにして隣りに立った。


スマホ画面には『損失を与えました』の文字が表示されている。


やっぱり、これが損実だったんだ!


「よかった」


「え?」


あたしは夢の言葉に驚いて視線を向けた。


「だって、これがさっきの損失だったんだよね? やっぱり靖子は傷つかないってことだよ」


「それはそうかもしれないけど……」


あたしは散乱した教材へ視線を落とす。


今回はたまたまケガをしなかったけれど、毎回大丈夫だという保証はどこにもない。


そんなことアプリの説明にも書かれていなかったし。


「ねぇ、そうとわかれば次の相手を決めないと」


夢が目をランランと輝かせて言う。


それはまるで、あたしの心配なんてまるでしていないように見えて、あたしはなんとなく寒気を感じたのだった。